【給与や賞与】役員報酬額の決め方や毎月の給与明細の作り方と仕訳例まとめ

役員報酬の経理仕訳

一人社長の会社を設立後に困ってしまうことといえば、役員報酬(毎月の給与や賞与、ボーナス)をどうやって支払えばいいのかということだと思います。

  • 役員報酬の金額はいくらにすればいいのか?
  • 役員給与の支払日や支払開始日はいつすればいいのか?
  • 報酬から支払われる所得税や住民税、健康保険料、厚生年金保険料などの金額はどうやって算出するのか?
  • 給与明細はどうやって作ればいいのか?
  • 給与支払時の仕訳入力はどうやってやればいいのか?
  • 会社が預かった税金や社会保険料はどうやって納めればいいのか?
  • 源泉徴収簿への記載はどのよにすればいいのか?

などなど、はじめて役員報酬を支払うときには分からないことばかりだと思います。

そこで今回は、一人社長の会社で役員報酬を支払う具体的な方法について、詳しくお話していきます。

なお、一度決めた役員報酬の金額を増額したい場合の具体的な手続きの方法は、こちらの記事が参考になると思います。

>>【合同会社】一人社長の役員報酬(給与)の増やし方とその手続き手順

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役員報酬の金額の決め方について

まずはじめに決めなければならないことは、役員報酬の金額をいくらにすればいいのかということです。

というのも、法務局での合同会社の設立登記の完了後、厚生年金に加入するための年金事務所に提出する書類(健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届)の中に「報酬月額」を記載する場所があるため、役員報酬の金額は早めに決めておかなければならないからです。

役員報酬を記載する場所

ここで知っておきたいことは、株主総会(合同会社の場合は社員総会)で決議した内容であれば、毎月の給与として支払われる役員報酬の額はいくらに設定してもOKです。

社員総会は合同会社設立から3ヶ月以内に開催し、その内容について以下のような内容の同意書を作成して保管しておく必要があります。


同 意 書

平成 〇〇年 ○月 ○日、 当社本店において、下記のとおり決定した。

業務執行社員 〇〇〇〇 の役員報酬を、平成30年 4月より、次のとおり決定する。

1.報酬金額  月額 〇〇〇〇円

以上

上記について、決定したことを証するため、この同意書を作成し、次のとおり署名捺印する。

平成 〇〇年 ○月 〇〇日

〇〇〇〇合同会社

業務執行社員   〇〇〇〇 (印)←署名と捺印(会社印)


このような議事録や同意書がない場合、税務調査時に損金算入(経費として処理すること)を否認される可能性があります。

ちなみに、役員報酬を経費(損金)として処理するためには、以下の2つの内容を守る必要があります。

役員報酬を経費(損金)処理するための主なポイント

  1. 毎月同額(定期同額)であること
  2. 役員報酬に変更があった場合は、会社設立時(翌期以降は事業年度開始)から3ヶ月以内に行うこと

基本的に上記の内容を守ることで、会社から支払われた役員報酬(毎月の給与)は会社の損金(経費)として処理することが可能となります。

逆に、上記の2を守らずに勝手に役員給与を増やして支給した場合、毎月同額だった金額からの増分については、会社の経費としては認められなくなります。

なお、一般的に役員に賞与(ボーナス)を渡すことができないということを聞いたことがあるかもしれませんが、それは上記の役員報酬を経費として落とすための条件である「毎月同額(定期同額)であること」に反するからです。

つまり、賞与を支給する事自体は可能なのですが、それを会社の損金として処理してはならないということになります。

ただ、ある特定の条件をクリアした場合、役員賞与も会社の損金として認められることがあります。

役員の給与や賞与、およびそれらを損金として処理してよいかどうかということに関しては、以下のサイトが参考になりますので、一読しておくことをおすすめします。

>>No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)|国税庁

これらのことから、会社設立直後は基本的な毎月同額の役員報酬額をしっかりと決めることに専念し、翌期以降で業績やキャッシュフローに余裕が出てた場合に賞与の支給を検討するという流れで考えていくことをおすすめします。

役員給与の支払日や支払開始日について

毎月の給与の支払日については、日本年金機構に提出した書類(健康保険・厚生年金保険新規適用届)に記載した日付を基準として支給していくことになります。

健康保険・厚生年金保険新規適用届のサンプル(裏)

ここで気になることといえば、会社設立後、何月から役員報酬の支払いを開始していけばいいのかということではないでしょうか?

この役員報酬の支払開始日については、会社設立後に税務署に提出する書類(給与支払事務所等の開設届書)の中にある「給与支払いを開始する年月日」というところにも記載する必要がありますが、基本的にはそこに記載した日付から給与の支払いを開始する必要があります。

合同会社設立の給与支払事務所等の開設届出書(下段)

というのも、ここに記載した給与開始日から所得税の源泉徴収や健康保険料、厚生年金保険料の給与天引きを行なわなければならないからです。

ですので、基本的には役員給与の支払開始日は上記の書類を提出する段階で決め、あとはその書類に記載した日付から給与の支払いを始めればよいと考えておきましょう。

役員報酬の控除額の具体的な計算方法

役員報酬は一般的な給与と同じように、源泉所得税や住民税、社会保険料(厚生健康保険、厚生年金保険)が報酬額から控除して(差し引いて、減額して)、残りの分を手取りの報酬として役員個人の口座に銀行振込するなどして支給するという流れになります。

具体的な各種控除項目の金額の算出方法については、以下で説明していきます。

【控除その1】源泉所得税

報酬から控除する源泉所得税の税額は、毎年税務署から会社宛に送られてくる書類の中にある源泉徴収税額表を参考に算出します。

源泉徴収税額表の表紙

源泉徴収税額表の見開き

この税額表は国税庁のHPでダウンロード可能(PDF)です。

>>平成30年分 源泉徴収税額表|国税庁

例えば、役員報酬額が月額50,000円の場合は、扶養親族の数に関係なく給与から控除される所得税額は0円となります。

役員報酬5万円の場合の源泉徴収税

また、役員報酬額が月額500,000円で扶養親族の数が1人の場合、下記の表から源泉徴収税は23,430円となります。

役員報酬50万円の場合の源泉徴収税

ちなみに、この給与所得の源泉徴収税額表の甲の欄で税額を算出するためには、会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出しておく必要があります。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の雛形

出典)[手続名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告|国税庁

この書類は会社の源泉徴収簿ファイルなどにまとめて保管しておき、給与支払いのタイミングなどでその書類に記載されている情報から扶養家族などの人数を確認していきましょう。

この書類に記載されている情報を元に扶養親族等の数を求めていくのですが、その扶養親族等の数は一般的な家族の数ではないため、少しややこしく感じてしまいますが、下記の書類を読めば理解できると思います。

>>Ⅴ 税額表の適用方法(PDF) – 国税庁

このように役員報酬から控除する源泉徴収税については、上記のように基準となる役員報酬額と扶養家族などの数から税額を算出することができます。

【控除その2】住民税

役員報酬から控除する住民税の額は、毎年5月末ごろまでに市町村役場から会社宛に送られてくる「特別徴収税額決定通知書」に記載されています。

特別徴収税決定通知書

そこに6月~来年5月までの住民税(市民税+県民税)の額が記載されていますので、その金額を報酬額から控除します。

なお、住民税は前年の給与に対して課税されるものですので、会社設立直後は前年の給与支払い実績がないため、その年の役員報酬から住民税を控除する必要はありませんので、ご参考まで。

【控除その3】健康保険料、厚生年金保険料

健康保険(協会けんぽ)や厚生年金保険料は、会社と個人が折半(会社50%、個人50%)して負担することになっているため、個人負担分は役員報酬から控除する必要ああります。

それらの保険料額を知るためには、まず日本年金機構から会社宛に送られてくる「健康保険・厚生年金保険資格取得確認および標準報酬決定通知書」などに記載されている標準報酬月額を確認していきましょう。

健康保険・厚生年金保険資格取得確認および標準報酬決定通知書上記の場合、健康保険の標準報酬月額は58,000円、厚生年金の標準報酬月額は88,000円ということになります。

次に、全国健康保険協会(協会けんぽ)のホームページなどで公開されている「厚生健康保険・厚生年金保険の保険料額表」で、具体的な保険料を算出していきます。

厚生健康保険・厚生年金保険の保険料税額表の例

出典)都道府県毎の保険料額表|全国健康保険協会 協会けんぽ

この保険料額表は年度や都道府県ごとに内容が異なるため、上記のホームページから適切な表を選んで使用していきましょう。

例えば、健康保険の標準報酬月額は58,000円、介護保険第2号被保険者(40歳以上64歳以下の人)ではない場合、下記のように健康保険料の月額は全額で5,742円となり、役員報酬から控除すべき健康保険料の額は2,871円(50銭以下の場合は切り捨て)となります。

厚生健康保険料税額表の算出

同様に、厚生年金の標準報酬月額は88,000円だったので、下記のように厚生年金保険料の月額は16,104円となり、役員報酬から控除すべき厚生年金保険の額は8,052円(50銭以下は切り捨て)となります。

厚生年金保険の保険料税額表の例

【控除その4】その他

この他に、通勤費など役員の所得税計算上の役員所得から控除できる(非課税通勤費とする)を利用する場合などは、それらの科目についても金額を計算しておきましょう。

なお、役員の場合は雇用保険に加入することはできませんので、その辺りは従業員の給与明細と異なってくるということを理解しておきましょう。

給与明細の具体的な作成方法

上記で役員報酬額とそこから控除すべき税金や社会保険料の額を知ることができましたので、ここからは給与明細を作るプロセスに入っていきます。

給与明細はどのようなフォーマットのものをつかってもOKですので、ネットなどで雛形をダウンロードして活用すると良いでしょう。

そして、その給与明細に先程までに確認してきた報酬額や控除額を入力していきましょう。

給与明細の入力例

そして、給与支給日の午前中を目処に差引支給額の振り込み(役員個人の口座など)と給与明細の配布を行いましょう。

役員報酬支払時の具体的な仕分け例

ここからは給料日などに役員報酬を支払ったときの会計ソフトでの仕訳例について解説していきます。

基本的には先程までに解説してきた給与明細を作る時に使った数字を元に仕分けを行っていきます。

給与明細の入力例

上記の例で、役員報酬を会社の銀行口座(普通預金)から支払った場合、具体的な仕訳例は以下の通りです。

借方科目金額貸方科目金額
役員報酬50,000普通預金39,077
預り金10,923

(摘要)4月支給従業員給与

このような感じで、役員報酬から差し引かれた分(社会保険料)は、会社が預かるという形で仕分けておきます。

この預り金は、実際に税務署に源泉徴収税を、そして日本年金機構に健康保険料や厚生年金保険料を支払う際にもう一度仕分けを行っていくことになりますが、この報酬支払を行った段階では、上記のように仕分けしておきます。

源泉徴収簿への記入例

役員報酬を支払ったタイミングで、源泉徴収簿(一人ひとり別々の紙に記入していく)に役員報酬の詳細を記載しておきましょう。

役員報酬を支払った場合の源泉徴収簿

基本的にはこの表面に給与明細の内容を記入しておけばOKです。

また、給与明細の裏面の左上についても、各種手当の内訳などを記入する欄がありますので、そちらの方も忘れずに記入しておきます。

具体的な源泉徴収簿の記入方法については、こちらの記事で紹介しています。

>>【毎月給与と年末調整】源泉徴収簿の書き方と記入例まとめ(ひとり社長編)

源泉徴収簿の用紙は税務署から会社宛に送られてきているはずですが、会社設立直後などでまだ用紙が送られてきていないという場合もありますので、用紙が見当たらない場合は税務署でもらうか、以下の国税庁のHPからダウンロード印刷して使いましょう。

>>[手続名]給与所得・退職所得に対する源泉徴収簿の作成|国税庁

ただ、特に源泉徴収簿の提出義務などはありませんが、7年間の保管義務はありますし、給与支払のタイミングで記入しておけば、年末調整の計算が楽に行えます。

お疲れ様でした。

これで役員報酬の支給は完了です。

源泉徴収税や社会保険料の具体的な納付方法

ここからは、報酬支払時に役員から預かった源泉徴収税や健康保険料、厚生年金保険料などを税務署や日本年金機構などに納める具体的な支払い方法についてお話していきます。

源泉徴収税の納め方(個人ではなく会社として行う)

まずはじめに、役員の給与から控除した源泉徴収税を会社として税務署に収める方法についてお話していきます。

役員報酬から差し引いた所得税は、基本的には翌月の10日までに納付する必要があります。

具体的な納付方法としては、会社宛に税務署から送られてくる「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(納付書)」という書類に必要事項を記入し、銀行や所轄の税務署で納付するという流れとなります。

給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書の記入例

記入方法は簡単で、左上に給与支払日を記入や報酬を受け取った人の人数、給与の額、前線徴収税の額などを記入していけばOKです。

上記の納付書の記入が終わったら、納付書の合計額の欄に記載された金額を持って銀行または所轄の税務署に行き、源泉徴収税を納付します。

上記の例のような場合、役員報酬の額が50,000円とかなり低いので、源泉徴収税の額は0円ということになりますが、このように納付額が0円となっても納付書だけは税務署に提出しなければなりません。

なお、基本的にこの源泉所得税の納付は毎月1回となっていますが、役員と従業員が常時10人未満の場合は源泉所得税の納期の特例が利用でき、その特例を利用すると1月から6月までの支払分を7月10日、7月から12月までの分を1月20日にまとめて納付する(年に2回の納付でOKとなる)事ができるようになります。

この納期の特例を利用するためには、事前に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出しておく必要があります。

その申請書の具体的な提出方法については、こちらの記事が参考になると思いますので、ご参考まで。

>>【合同会社設立】源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の書き方

源泉徴収税を納付した際の具体的な会計ソフトの仕訳方法は以下のようになります。

仕分例)10,000円の源泉徴収税を現金で支払った場合

借方科目金額貸方科目金額
預り金10,000現金10,000

(摘要)4月支給分 所得税納付

住民税の納め方(個人ではなく会社として行う)

市民税や県民税などの住民税は、前年度の所得を元に課税される額が決定され、毎年5月頃に下記のような封筒が会社宛に届きます。

住民税(市民税、県民税)の特別徴収

この封筒の中に、市民税県民税の納付書(6月~来年5月まで、金額の記載あり)が入っていますので、それを使って指定されている金融機関で税金を支払っていきます。

市民税県民税の特別徴収の納付書

住民税(10,000円)を支払った際の具体的な仕訳例は以下のようになります。

仕分例)10,000円の住民税を現金で支払った場合

借方科目金額貸方科目金額
預り金10,000現金10,000

(摘要)4月支給 住民税納付

社会保険料の納め方(個人ではなく会社として行う)

会社として行う社会保険料の納付は簡単で、毎月20日頃に日本年金機構から会社宛に送られてくる納付書を使って銀行窓口やペイジーで支払いを行うだけとなります。

役員報酬の社会保険料の納付

特に記入が必要な箇所はなく、この書類(3枚綴り)を持って銀行窓口かペイジーで支払いを行いましょう。

なお、上記の納付書払いではなく、口座振替を利用したい場合は、年金事務所に備え付けてある「健康保険厚生年金保険保険料口座振替納付(変更)申請書」に必要事項の記入と捺印を行って年金事務所に提出れば、社会保険料の支払を口座引落で行うことが出来るようになります。

この社会保険料を支払った際の具体的な仕訳例は以下のようになります。

借方科目金額貸方科目金額
預り金10,923現金22,101
法定福利費11,178

(摘要)4月支給 社会保険料納付

最後に一言

今回は、【給与や賞与】役員報酬額の決め方や毎月の給与明細の作り方と仕訳例まとめについてお話しました。

初めて毎月の給与となる役員報酬を支払う場合、具体的に何をしていけばいいのかよくわからないと思います。

まずは、ざっとこの記事を読んでいただいて、具体的な作業内容を頭に入れてから、細かい報酬の支払業務を行っていくとスムーズに作業が進むと思いますので、是非参考にしてみてくださいね。

それでは!

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