毎年6月ごろに日本年金機構に送られてくる算定基礎届・・・。
この算定基礎届は、給与から天引きされる社会保険料を決めるための標準報酬月額(4~6月の給与の平均額で決まる)を算出するために、会社が日本年金機構に提出するものとなります。
書類の提出は7月2日~7月10日となっていて、提出方法は同封されている封筒で郵送提出するのが一般的です。
ただ、会社設立後はじめての場合、何をどうやって記入していけばいいのかよくわからないことと思います。
そこで今回は、算定基礎届の具体的な記入例から提出方法、提出後に送られてくる通知書の内容まで、詳しくお話してきます。
【STEP1】算定基礎届を受け取る
算定基礎届は、毎年6月初旬に郵便で会社宛に届きます。
この書類は厚生年金保険や協会けんぽの健康保険に加入している人がいる事業者に送付されるものですので、こちらの記事で紹介したように年金事務所への届け出を提出していないと送付してもらうことができません。
>>【合同会社設立】登記後に行うべき各役所への届出書類まとめ
会社設立初年度に上記の書類が届かない場合は、まだ年金事務所などへの手続きが完了していない可能性がありますので、そちらの手続き関係などを確認しておきましょう。
ちなみに、多くの場合、封筒の中には以下のような2種類の申請書類が入っていると思います。
被保険者報酬月額算定基礎届-総括表-
被保険者報酬月額算定基礎届(70歳以上被用者算定基礎届)
算定基礎届の提出というのは、これらの書類に記入後、年金事務所に提出すればOKということになります。
【STEP2】算定基礎届(総括表)に記入する
ここからは、具体的な記入方法についてお話していきます。
まずはじめに、被保険者報酬月額算定基礎届の総括表の方から記入していきましょう。
算定基礎届(総括表)の上段
総括表の上段部分は、郵送で送られてきた段階でほとんどの欄が印字されていますので、記入する部分は比較的少なめです。
- 提出者記入欄の電話番号
→会社の電話番号を記入しておきます。 - 業態
→この1年間に業態(〇〇業など)の変更がなかった場合は「0.無」に○を、変更があった場合は「1.有」に○をします。また、変更があった場合は、事業所業態分類表(下記で紹介)を参照して、「事業の種類」と「変更後の業態区分」を記入する。
>>業態分類(PDF)|全国健康保険協会 協会けんぽ - 事業所情報
→会社が本社のみの場合は「0.いいえ」に○を、会社の支店や工場、出張所など複数の事業所を有している場合は「1.はい」に○をつけましょう。「1.はい」の場合、支店などの数や複数の事業所の適用単位(事業所ごとに適用申請を出しているのか、会社で一括適用しているのか)にチェックする。
なお、印字されている部分に訂正の必要がある、または法人番号などの記載がないという場合は、正しい情報を記載してくだい。
法人番号を記載する場合は、法人番号が確認できる通知書(法人番号指定通知書など)の写しを添付する必要がありますので、ご参考まで。
算定基礎届(総括表)の中段
- 7月1日現在の被保険者数
→はじめに右側の内訳に対象人数を記入します。その後、内訳に記載されている被保険者数の総数(㋐+㋑+㋒-㋓)を記入します。注意点としては、6月30日までに退職した人(㋓)はこの申請の対象外となりますので、7月1日現在の被保険者数の数から差し引く必要があります。 - 算定基礎届対象者数
→内訳に記載されている被保険者数の総数(㋐+㋑-㋓)を記入します。注意点としては、6月以降に被保険者となった人(㋓)は、別途年金事務所に提出する資格取得届によって翌年8月までの標準報酬月額が決まりますので、この届出の対象外となります。 - 7月1日現在、賃金報酬を支払っている人のうち被保険者となっていない人
→はじめに右側の内訳に対象人数を記入します。その後、右側の内訳に記載されている被保険者になっていない人の数の総数を記入しましょう。 - 請負契約
→請負契約をしていない場合は「0.いない」に○をし、請負契約をしている場合は「1.いる」に○をしてカッコ内に人数を記入します。 - 派遣労働者
→派遣業者から派遣されている労働者がいない場合は「0.いない」に○をし、派遣業者から派遣されている労働者がいる場合は「1.いる」に○をしてカッコ内に人数を記入します。 - 海外勤務者
→子会社など、海外で勤務している人がいない場合は「0.いない」に○をし、海外で勤務している人がいる場合は「1.いる」に○をしてカッコ内に人数を記入します。 - 就業規則などで定めている一般従業員の勤務状況について
→一般従業員の方の勤務状況を記載します。一人社長(役員一人の会社)の場合は未記入でOKです。 - 一般従業員以外の方の平均的な勤務状況
→一般従業員以外の方の勤務状況を記載します。一人社長(役員一人の会社)の場合は未記入でOKです。
算定基礎届(総括表)の下段
- 給与支払日
→役職(役員、正職員、パートアルバイト等)ごとに給与の締切日、支払日を記入します。 - 昇給月
→昇給月に変更がない場合は、「0.無」に○をします。変更がある場合は「1.有」に○をし、変更内容を右側の欄に記入します。 - 報酬の種類
→現在支給している給与の種類に○をつけます。 - 賞与など
→賞与などの支払予定月に変更がない場合は、「0.無」に○をします。変更がある場合は「1.有」に○をし、変更内容を右側の欄に記入しておきましょう。
【STEP3】被保険者報酬月額算定基礎届(70歳以上被用者算定基礎届)に記入する
続いては、2枚目の提出書類となる被保険者報酬月額算定基礎届に記入していきましょう。
被保険者報酬月額算定基礎届の上段
申請書類の上段はほとんどが郵送されてきた段階で印字されていますので、記入する部分は少ないです。
- 提出者記入欄の電話番号
→会社の電話番号を記入します。 - 提出者記入欄の押印
→会社代表印(会社実印、代表者印)を押印します。提出者記入欄が空欄になっていて何も印字されていないような場合、事業主が自署すれば押印は不要となります。
被保険者報酬月額算定基礎届の下段
- 被保険者整理番号
→健康保険被保険者証の番号順に印字されています。 - 被保険者の氏名
→被保険者の氏名(カタカナの場合もあり)が印字されています。誤っている場合は「氏名変更(訂正)届」(日本年金機構のホームページでダウンロード)を提出しましょう。
>>被保険者の氏名に変更があったとき|日本年金機構 - 生年月日
→被保険者の生年月日が印字されています。ハイフンの前の数字は年号を表しており、「5」が昭和、「7」は平成となります。誤っている場合は「生年月日訂正届」(日本年金機構のホームページでダウンロード)を提出しましょう。
>>被保険者の生年月日に訂正があったとき|日本年金機構 - 適用年月
→標準報酬月額が改定される年月を記入します。普通、本年9月が改定年月となります。 - 従前の標準月額
→現時点で決定している標準報酬月額(500,000円の場合は「500」)が記載されています。ちなみに、健康保険と厚生年金保険では標準報酬月額の上下限額が異なるため、それぞれ別の数字が記載されていることもあります。 - 従前改定月
→「⑤従前の標準報酬月額」が適用された年月を記入します。通常の場合(昨年から大きな賃金変動がなかった場合) 、従前改定月は昨年9月となります。 - ー
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- 給与計算の算定基礎日数
→給与計算の算定日数とは、その報酬の支払対象となった日数のことを指します。月給者であれば暦日数、日給・時給者は出勤日数を記入します。例えば、毎月15日締切、当月25日払いの場合、4月は3月16日から4月15日までの「31日」と記入します。なお、月給者で欠勤日数だけ給与が差し引かれている場合は、就業規則等に定められている日数から欠勤日数を差し引いた日数を記入します。 - 通貨によるものの額
→4月、5月、6月に通貨で支払われた報酬(基本給や通勤手当などの各種手当も含む)をそれぞれの月に記入します。ただし、賞与、皆勤賞、永年勤続賞、慶弔費、第入り袋などはこの欄に記入する額に含みません。なお、さかのぼって昇給差額が支給された場合は、その額も合わせて記入し、8の遡及支給額にその旨を記入します。 - 現物によるものの額
→4月、5月、6月に食事、住宅、定期券などの現物給与の支給がある場合に金銭に換算して記入します。また、現物支給がない場合は0を記入します。なお、通勤定期券を現物で支給している場合は、通勤定期券代を月数で割った1ヶ月分の額を記載します。 - 合計
→各月の合計額を記入します。ただし、パートなどの「4分の3以上勤務者」の場合は、支払基礎日数が15日以上の月の合計額を、短時間労働者の場合は、支払基礎日数が11日以上の月の合計額を記入します。
※短時間労働者とは、「4分の3以上勤務者」に該当しない人のうち、次の5つの要件にすべて該当する人のことを指します。①週の所定労働時間が20時間以上である、②雇用期間が1年以上見込まれている、③賃金の月額が8.8万円以上である、④学生ではない、⑤国・地方公共団体の事務所または被保険者数が常時501人以上の企業(501人未満であっても短時間適用拡大該当の申出をした企業を含む)に勤めている。 - 総計
→支払基礎日数が17日以上の月の報酬の総計を記入します。なお、「4分の3以上勤務者」ですべての支払基礎日数が17日未満の場合は、15日以上の月の報酬の総計を記入し、「短時間労働者」の場合は、支払基礎日数が11日以上の月の報酬の総計を記入します。 - 平均額
→「⑭支払基礎日数が17日以上の月の報酬の総計」を支払基礎日数17日以上の月数で割った額を記入します。なお、「4分の3以上勤務者」であってすべての支払基礎日数が17日未満の場合は、15日以上の月の報酬の総計を、その月数で割った額を記入します。「短時間労働者」の場合は、支払基礎日数が11日以上の月の報酬の総計を、その月数で割った額を記入します。 - 修正平均額
→3ヶ月以前にさかのぼって昇給したことにより、4月から6月の報酬額に該当差分が含まれている場合は、差額分を除いた3ヶ月分の平均額を記入します。昇給などがない場合は記入不要です。 - 個人番号(基礎年金番号)
→70歳以上の被用者の人のみ記入します。個人番号の場合は本人確認を行った上で記入しましょう。なお、基礎年金番号を記入する場合は、年金手帳等に記載されている10桁の番号を左詰めで記入します。 - 備考
→当てはまる場合は○をつけます。
ちなみに、具体的な記入例については、日本年金機構のHPに記入例が掲載されていますので、そちらの方を一度ご覧になってみると良いでしょう。
記入ミスや訂正がある場合の対処法
この算定届は記入時に考慮すべき点がたくさんあるため、記入ミスなどによる訂正が必要になる場合があります。
訂正する場合は、訂正箇所に2縦線して修正した上で、そこに訂正印を押印しましょう。
訂正箇所が多く、書類が見にくくなってしまった場合は、日本年金機構の窓口などで新しい記入用紙をもらうか、以下の日本年金機構のホームページなどでダウンロードしたものをA4で印刷したものに記入し直すのがいいでしょう。
【STEP4】算定基礎届を提出する
算定基礎届に記入が完了したら、書類を日本年金機構に提出します。
具体的な提出方法としては、一緒に送られてきた返送用封筒に入れて郵送するのが一般的です。
というのも、年金事務所の窓口に持ち込むことも可能なのですが、事務作業の効率化のため、結局年金事務所に持ち込んでも職員の方で上記と同じ封筒に入れて担当となる広域事務センターの方に送り直すことになってしまいます。
直接、返信用封筒を使ったポスト投函で提出したほうが申請書類がスムーズに提出できますので、そのことを知っておきましょう。
ちなみに、この返信用封筒(角型2号)には切手を貼る必要があります。
角型2号は定形外となり、重さによって切手の料金が変わってきますので、以下の表を参考に切手を貼って郵便ポストに投函しましょう。
なお、ここでの注意点としては、これらの書類は提出してしまうと手元には戻ってこないため、必ず提出書類のコピーをとっておき、その控えは会社で保管しておくことです。
そうしておけば、年金事務所から問い合わせがあったときなどにその控を確認しながら対応することができます。
また、提出後に間違えに気がついた場合、年金事務所に連絡を入れ、間違えた内容を担当者に伝え、どのように対処すればいいのか聞いておきましょう。
ケースバイケースですが、修正のための書類を郵送で送るだけでOKの場合もありますし、年金事務所まで行って書類を訂正しなければならない場合もあります。
いずれにせよ、間違えに気がついたら早め早めに連絡を入れて対処しておくのがベターです。
お疲れ様でした。
これで算定基礎届の提出は完了です。
【STEP5】標準報酬決定通知書を受け取る
算定基礎届を提出してから1ヶ月前後で会社宛に以下のような郵便物が送付されてきます。
中に入っている「健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書」には、9月以降の標準報酬月額が記載されています。
9月の給与支給時はこの決定通知書に記載の標準報酬月額を使って健康保険や厚生年金の保険料を算出していくことになりますので、ご参考まで。
最後に一言
今回は、【7/10〆切】算定基礎届の具体的な記入や訂正、提出方法まとめについてお話しました。
この書類は一度提出したことがある人にとってはそれほど難しいものではないのですが、はじめて申請する人にとってはとても難しく感じてしまい、いろいろと困ってしまうのではないかと思います。
そのような場合は、各地で6月中旬から下旬にかけて行われている「算定基礎届事務講習会」(郵送されてきた書類の中に日時や会場が記載されている書類がある)に参加してみたり、日本年金機構の窓口で直接質問したりしてみるといいですよ。
講習会では、基本的に下記の書類に沿って話がなされていましたので、この書類に一通り目を通せば申請書を完成させることが出来できます。
是非参考にしてみてくださいね。
それでは!