毎年11月~12月ごろになると会社の年末調整が始まります。
この年末調整は、11月中旬ごろになると税務署から会社宛に郵送で送られてくる年末調整のための書類一式が入った封筒が届くところからスタートします。
その封筒の中に、従業員や役員に配布して記入してもらうための書類(今回の給与所得者の扶養控除等申告書もこの中に入っている)や会社側が税務署、市区町村役場に提出するための書類などが入っていますので、会社側は下記の記事に記載されたスケジュールで書類の作成と各役所への提出を行っていくことになります。
>>【ひとり社長の会社】年末調整の具体的な手順と提出書類の記入例まとめ
今回は、その年末調整で会社側が役員や従業員に配布し、その役員や従業員がそれぞれ各個人で記入しなければなならない「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」という書類の具体的な記入方法についてお話していきます。
年末調整とは?
年末調整とは、給与の支払いを受ける従業員や役員(あなた)を対象に、毎回の給与の支払い時に会社で預かった所得税の一年間の合計額と、その年の給与の給与の合計額にかかる所得税の金額を比較して、その過不足額を精算するための手続きのことを言います。
一般的には会社側で年末調整を行うことにより、その会社に努めている役員や従業員の大部分が自分で確定申告を行うことなく、所得税や住民税の申告や納付が完了するという制度となります。
なお、会社から受け取る給与以外に所得があるような場合、受け取った給与の額(給与所得の額)は年末調整をした結果である源泉徴収票を添付して確定申告を行うという流れになります。
この年末調整は毎年11月中旬頃に税務署から会社宛に送られてくる年末調整で使う書類一式が入った封筒が送られてくるところからスタートします。
この封筒の中に今回紹介する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が入っていますので、会社側はそれを役員や従業員に配布して、それを役員や従業員の各個人で記入してもらい、期日(最後の給料日の2週間前ぐらいを目処とする場合が多い)までに返却してもらい、その書類に記載された内容を使って、会社側で各個人の年末調整の計算を行っていくという流れになります。
役員や従業員がたくさんいて申告書が足りないという場合は、管轄の税務署に備え付けがありますし、以下の国税庁のHPからダウンロード印刷したものを使ってもOKです。
ひとり社長の場合は、この会社側の事務と役員個人で作成する分の両方すべてを1人で行うという感じで理解してもらえればいいでしょう。
申告書配布時の注意点
この給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を従業員や役員に配布するときの注意としては、今年分申告書だけではなく、来年分も同時に配布して記入してもらっておくということです。
もう少し細かい話をしていくと、今年度の会社側での年末調整作業では今年分の申告書があればOKなのですが、来年度の給与の支払いからは来年分の申告書を元に所得税額や住民税額を会社側で計算して給与から控除するという流れになっています。
会社側が来年1月分の給与を支払うための事務処理を進めていくためには、来年分の申告書が給料日までには必要となってきますので、年末調整の段階で来年分の申告書も一緒に役員や従業員に記入しておいてもらったほうがいいということなのです。
なお、今年分の申告書については原本の紛失を防ぐために役員や従業員にコピーしたものを配布し、変更があった場合は赤字で修正して返却してもらうようにするといいでしょう。
会社側での年末調整の流れは上記のようになっていますので、役員や従業員の人は年末調整の事務処理が遅れてしまわないように、指定された期日までに申告書を会社に提出するようにしていきましょう。
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の記入例
ここからは、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の具体的な記入例についてお話していきます。
役員や従業員が各個人で記入すべき内容
まずはじめに、役員や従業員が個人で記入していく内容について紹介していきます。
申告書の上段部分
申告書の上段部分の左側は会社側で記載する内容ですので、役員や従業員個人としては右側の部分をボールペンなどで記入していきます。
- あなたの氏名
→自分の名前を記入し、認め印を押印します。 - あなたの個人番号
→自分の個人番号(マイナンバー)を記入します。 - あなたの住所又は居所
→自分の住所を記入します。 - あなたの生年月日
→自分の生年月日を記入します。 - 世帯主の氏名
→世帯主の氏名を記入します。世帯主が誰になっているかわからない場合は市役所で住民票をもらってきて、そこに記載の世帯主名を記入すればOKです。 - あなたとの続柄
→あなたからみた世帯主の続き柄(本人、父、母など)を記入します。 - 配偶者の有無
→配偶者の有無を記載します。結婚していて妻や夫がいる場合は「有」に○をし、そうではない場合は「無」に○をします。 - 従たる給与についての扶養控除等の申告書の提出
→複数の会社から給与を受け取っている場合はこの欄に○をつけます。そうではない場合は空欄のままでOKです。大部分の人は一箇所からしか給与を受け取っていないと思いますので、空欄のままになることがおおいでしょう。
申告書の中段部分
申告書の中段部分は該当のある場合のみ記載する必要があります(記載がある場合のみ各種控除が受けられる)が、特に該当がない場合は空欄のままでOKです。
なお、あなたの家族がこれらの控除対象者となるかどうかということについては、下記の国税庁のHPを参考にしたり、会社の年末調整担当者に聞いてみたり、所轄の税務署の相談窓口などで確認してみるのがいいでしょう。
- A.源泉控除対象配偶者
>>No.1191 配偶者控除|国税庁
>>No.1195 配偶者特別控除|国税庁
>>No.1190 配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか|国税庁 - B.控除対象扶養親族(16歳以上)
>>No.1180 扶養控除|国税庁
>>No.1182 お年寄りを扶養している人が受けられる所得税の特例|国税庁 - C.障害者、寡婦、寡夫又は勤労学生
>>No.1160 障害者控除|国税庁
>>No.1170 寡婦控除|国税庁
>>No.1172 寡夫控除|国税庁
>>No.1175 勤労学生控除|国税庁
申告書の下段部分
申告書の下段の16歳未満の扶養親族というところには、16歳未満の子供がいる場合に記入していきます。
- 氏名
→子供の名前を記入します。 - 個人番号
→子供の個人番号(マイナンバー)を記入します。 - あなたとの続柄
→あなたから見た子供の続柄を記入します。 - 生年月日
→子供の生年月日を記入します。 - 住所又は居所
→子供が住んでいる場所の住所を記入します。 - 控除対象外国外扶養親族
→通常は空欄のままでOKです。子供が外国で住んでいる場合は「○」をつけます。 - 所得の見積額
→アルバイトなどをしていない場合は「0円」と記入します。この欄に記載すべき金額は所得ですので、アルバイトをしていても給与の収入額(額面、税引前)が65万円以内であれば所得は0円となりますので、「0円」と記入してOKです。 - 異動月日及び事由
→子供が増えたりした場合は「○月○日 出生のため」などと記入します。
なお、この16歳未満の扶養親族という欄に記入した場合、所得税が控除されるのではなく、住民税の方の課税、非課税の判定基準として使われます。
具体的には、その年の所得が下記の票の基準額以下である場合、住民税(均等割、所得割)が非課税となり、来年の住民税(給与から勝手に控除されるもの)を支払わなくて良くなるため、手取り額が増えることになります。
出典)個人住民税の非課税限度額とは I 花巻市
注意点としては、共働きなどの場合、同一の子供の名前を父と母の両方の申告書に記入することはできないということです。
例えば、共働きで二人共所得が十分に多い場合は、子供の名前を記入してもしなくても住民税の額は変わりませんが、奥さん側の所得が比較的少ないような場合、そちらの方に子供の名前を記載しておけば、奥さん側の住民税が非課税になる可能性があったりしますないので、どちらの申告書に子供の名前を記載するほうが得なのか、事前に検討してから記入する必要があります。
書き間違えで修正が必要な場合
この申告書に関しては特に訂正印などを押す必要はありませんので、間違った部分は二重線を引き、そのすぐ横に正しい情報を記入しておきましょう。
本年分の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の内容に変更があった場合
本年分の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の内容に変更があった場合、赤ペン(修正液や修正テープは以前の情報が見えなくなってしまうため、使わないほうが良い)を使って追記、または正しい情報に修正(二重線で消すなど)をしておきましょう。
こちらの場合も特に訂正印などを押す必要はありません。
異動月日及び事由の欄には「○月○日 出生のため」という感じで、異動となった月日とその理由(結婚、離婚、出生、死亡、産休・育休、就職など)を記載しておきましょう。
お疲れ様でした。
これで役員や従業員個人が記入すべきことは完了しましたので、〆切までにこれらの書類(2枚、本年分、来年分)を会社に提出してください。
会社側で記入すべき内容
次は、役員や従業員個人が記入捺印した書類を回収した後に会社側で記入すべき内容についてお話していきます。
申告書上段の左側の部分には、会社側で以下の内容を記入してきます。
- 所轄税務署長等
→所轄の税務署長や市区町村長の情報を記入します。例えば、「鈴鹿(税務署長)」、「鈴鹿(市区町村長)」など。 - 給与の支払者の名称(氏名)
→給与の支払者の名称を記入します。会社法人の場合は法人名、個人事業主の場合は個人名を記入します。 - 給与の支払者の法人(個人)番号
→会社法人の場合は法人番号、個人事業主の場合は個人番号(マイナンバー)を記入します。 - 給与の支払者の所在地(住所)
→会社の住所を記入します。 - 給与支払者の受付印
→会社の「角印」か「代表者印(会社印)」を押印します。
お疲れ様でした。
これで、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の作成は完了です。
最後に一言
今回は、【年末調整】給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の書き方の具体例まとめについてお話しました。
はじめての年末調整の場合、何をどうやって記入すればいいのかよくわからず困ってしまうことと思いますが、一つ一つ調べていけば最後には必ず完成させることができますので、根気よく取り組んでみてください。
なお、ひとり社長の場合、申告書中段の扶養控除や下段の16歳未満の扶養親族控除については、確定申告の方でも対応可能ですので、確定申告になれている場合はそちらの方で記載申告してもOKですので、ご参考まで。
それでは!